土くれにする時代。水木しげるの叫び
『ゲゲゲの鬼太郎』でご存知の漫画家、水木しげるさんの太平洋戦争へ出征する直前に記した手記が話題になっています。
NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』で見られた、やさしい感じの水木しげるさんとは印象の違う、戦争に直面した心の叫びが原稿用紙38枚が書かれているそうです。 水木しげるさんの手記には死の恐怖や未来を憂いながらも、こうありたいという願いなどが書かれていたとのこと。
水木しげるさん手記抜粋(BOOKS&NEWS 矢来町ぐるりより)
❝ 将来は語れない時代だ。毎日五萬も十萬も戦死する時代だ。芸術が何んだ哲学が何んだ。今は考へる事すらゆるされない時代だ。画家だらうと哲学者だらうと文学者だらうと労働者だらうと、土色一色にぬられて死場へ送られる時代だ。
人を一塊の土くれにする時代だ。
こんな所で自己にとどまるのは死よりつらい。だから、一切を捨てて時代になつてしまふ事だ。❞
『戦地に行けば死ぬ』
水木しげるさんは考えていたそうです。そして、無事では帰れないと気付いていた弟さん。生きては帰ってこないと思い泣く姉さん。でも送り出さないといけない苦しさ。この当時、みんなそうだったと思います。現実として、水木しげるさんの所属した部隊は、多くの戦死者が出て、水木しげるさんも左腕を失っています。
戦争を知らない私たちにとって、『戦争とはどこか他所の国の出来事』として捉えてしまいがちです。戦争と言う大きなテーマで考えると抽象的で解決策が見えにくくなりますが、戦争によって、命や心を失ったり、削り取られた人たちが、どれほど胸が潰されるような思いしてきたのか。ということくらいは感じることができるのではないでしょうか。帰ってこれないと知りながらも出向く人の気持ち。大切な人を死地へ送り出す気持ち。大切な人を亡くした気持ち。
終戦記念日を迎えるまでに、戦争についての自分の考えをまとめられたら、きっと、これからの平和に役に立つと思います。